vol.32 おくちの健康とからだ① 歯周病と全身の病気

2020年10月12日 保健師コラム

労働基準法に基づいて、定期的な健康診断を受診していると思います。
では、歯科検診は受診していますか?
口腔の健康は全身の健康へつながります。
今回は、「口腔」についてのお話です。

●歯周病とう歯

口腔疾患で代表的なものは「う歯(虫歯)」と「歯周病」です。
〈虫歯〉
虫歯は世界で最も多い疾患と言われています。
歯の表面には歯石(プラーク)が存在し、歯石の中には細菌が存在します。虫歯は、この細菌が糖質をもとに作りだす酸によって歯を溶かし、生じます。
多くは歯の間や溝から発生します。大人の場合、一度治療した歯の詰め物と歯の間に生じることもあります。
〈歯周病〉
歯周病は、歯と歯ぐきのすきま(歯周ポケット)から侵入した細菌が歯ぐきに炎症を起こす病気です。
歯石が付着していたり、噛み合わせや歯並びが悪いと歯周病になるリスクが高まります。
自覚症状のないまま進行することが多く、歯ぐきからの出血のあと、歯が抜け落ちるほど重症になることもあります。

●チェックしてみよう

  • 歯ぐきに赤く腫れた部分がある
  • 歯ぐきがやせてきたみたい
  • 歯を磨いた後、歯ブラシに血がついていたり、すすいだ水に血が混じることがある
  • ときどき、歯が浮いたような感じがする
  • 歯ぐきから膿がでたことがある
  • 口臭がなんとなく気になる
  • 歯と歯の間にものが詰まりやすい
  • 歯と歯の間の歯ぐきが、ピンク色の三角形ではなく、うっ血していてブヨブヨしている
  • 指で触ってみて、少しグラつく歯がある

当てはまるものが1~2個の場合・・・歯周病の可能性があります。
当てはまるものが3~5個の場合・・・歯周病が進行しているおそれがあります。早めに歯科受診を!

●歯周病と全身疾患

歯周病の原因は歯周病菌ですが、その住みかである歯石をためやすい生活習慣にも注意が必要です。
よく噛まない、歯の磨き忘れ、ストレス、喫煙などの生活習慣の乱れが、歯周病の悪化につながります。
また、歯周病がさまざまな全身の病気の発症や悪化のリスクになっていることもわかってきました。

脳心血管疾患

脳梗塞、狭心症や心筋梗塞は、動脈硬化の悪化により血液の流れが悪くなることで発症することが知られています。
動脈硬化は乱れた食習慣や運動不足、喫煙が原因であることは有名ですが、歯周病菌の刺激で動脈硬化を誘導する物質がでて、血管内にプラーク(脂肪の塊)を形成することがわかりました。
その結果、血栓ができやすくなり、脳心血管疾患へ発展する可能性が高くなります。

糖尿病

糖尿病は血糖を下げるインスリンの働きが十分でないために、高血糖が続く病気です。
肥満や食生活の乱れが主な原因ですが、歯周病菌から放出される毒素にも、インスリンの働きを悪くする作用があることがわかりました。
歯周病菌の毒素は腫れた歯ぐきから全身の血液に侵入します。その結果インスリンの働きを抑えてしまいますが、歯周病の治療を行えば、血糖値が改善することが明らかになっています。

低出生体重児

妊婦さんが歯周病の場合、早産や低出生体重児になるリスクが、約7倍になることがわかっています。これはタバコやアルコールよりも高い確率です。歯周病による歯ぐきの炎症が強くなると、陣痛を引き起こすホルモンが増加するためといわれています。

骨粗しょう症

骨粗しょう症は、全身の骨の強度が低下し、骨がもろくなり骨折しやすい状態になる病気です。女性に多く、特に閉経後の女性ホルモンの低下によって引き起こしやすくなります。女性ホルモンの低下は全身の骨をもろくし、歯周病の進行を助長させ、さらには歯を支えている歯槽骨にも影響します。

誤嚥性肺炎

誤嚥は、食べ物を飲み込む際に誤って気管に入ってしまうことです。その際に、歯周病菌も肺に侵入してしまい、炎症を起こすのが、誤嚥性肺炎です。

~虫歯から死に至ることも~

健康な状態であれば、虫歯菌が血液中に侵入しても免疫機能で排除できますが、糖尿病などの基礎疾患がある方、体力低下している方などは、排除しきれず、様々な場所で繁殖・感染を起こす可能性があります。最悪の場合、命に関わる病気です。虫歯くらい、と放置せずに、早めに対処しましょう。

参考文献
厚生労働省 eヘルスネット「口腔の健康」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth
日本臨床歯周病学会
http://www.jacp.net/perio/about/

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